著者: 湯浅 俊彦
タイトル: 「言葉狩り」と出版の自由―出版流通の現場から

 差別用語による出版物の回収が時々発生しているようである。

 差別用語による回収は「ちびくろサンボ」と黒人差別が有名である。
 また10年ほど前の筒井康隆の断筆宣言は自分の書いたSF小説の差別用語に反抗する意味で始まった。
 差別だという人(団体)の言いなりになって、いきすぎると「言葉狩り」ともなり得る。

 この「言葉狩り」と出版の自由という観点から、著者、出版社、書店の三者の関係を説明し、出版物の回収は誰が決めるべきか、出版物の回収理由の説明の是非を投げかけたものである。

内容はとっても難しい。
 


著者: 藤堂 志津子
タイトル: 風の部屋

 二股かけていた男二人に別れを告げた後に出会った13歳年下の学生アルバイトの娼夫。冷静なのかわからない娼夫が主人公・来実子の部屋にやってきて繰り広げられる来実子の気持ちとは反対の行動。
 来実子の行動にはまどろっこしさを感じ、イライラしてくる。




著者: 栗本 薫
タイトル: 黄昏の名探偵

いつもの栗本薫の小説とは違う。
なんか難しい漢字がたくさん使ってあるし、時代も大正から昭和初期の物語。
SFでもないし推理小説でもない。なんか変だなぁ、っと読みながら最後に分かった。

栗本薫(中島梓名義)が作詞・作曲したアルバム「黄昏の名探偵」の詩を小説化したものである。
最初に知っておけば良かったと後悔。
5つの短編集である。




著者: 泉 基樹
タイトル: 精神科医がうつ病になった―ある精神科医のうつ病体験記

 タイトル見て笑って買ってしまったが、内容はとっても重い。

 うつ病が原因で自殺してしまった友人、そして患者。
 精神科医の著者もうつ病になり、闘病生活から現役精神科医として復職するまで綴ったものである。

 僕もうつ病からなんとか復職したが、闘病生活はとってもよく分かる。
 自分は怠けじゃなく、うつ病だったということは回復して初めて分かるものである。
 精神科医自身が自分をうつ病患者と診断していても、休職しようとせず、危うく自殺までしてしまうころであったようだ。

 一般的に「うつ病は心の風邪」と言われるが、著者は「うつ病は心の肺炎」と言っている。うつ病は適切な治療を受けないと確実に命を落とす、からだそうだ。分かるような気がする。




著者: 水野 貴明
タイトル: Web検索エンジン Googleの謎

 ご存じWeb検索エンジンGoogleのいろいろな使い方を紹介した書である。今まで、検索では単語を並べる事しか知らなかったが、「+」とか「-」、「OR」等の使い方を初めて知った。
 タイトルにある「謎」はあまり感じなかったが、今後はもうちょっと上手な検索が出来るようになりそう。




著者: 安藤 裕康
タイトル: 世界最大の望遠鏡『すばる』

 今から5年ほど前にハワイ島の山頂に建設された口径8.2mもの世界最大の望遠鏡『すばる』の日共同建設プロジェクトの記録である。
 この『すばる』はプロジェクトXでも紹介されたり、『すばる』で撮影された映像はNHKでも時々見る事ができる。
 口径が8.2mもになると、鏡の研磨精度、精密な駆動装置等、新たな課題が山積みとなっていたようである。

 今後も『すばる』で新たな星雲の発見から宇宙の誕生の解明をし、遙か彼方からのすばらしい映像を期待したい。


著者: 一志 治夫
タイトル: たった一度のポールポジション

 今から20年ほど前の事故である。ニュースでも大きく取り上げられたことを思い出す。
 富士スピードウェイで23歳の若さで逝った天才カーレーサー高橋徹の生涯を綴ったノンフィクションである。22歳の若さでF2に昇格してまもなくポールポジションをとったがゆえ、回りからの大きな期待がプレッシャーとなり生涯を閉じてしまったようだ。

 こういうノンフィクションは鬱病の僕にはちょっと重すぎた。


著者: 家田 荘子
タイトル: 私の中のもう一人の私

 30人もの不倫する人妻のドキュメンタリーである。
 人妻の不倫する理由はひとそれぞれである。マザコンの旦那がイヤ、女として見てくれないのがイヤ、いつまでたっても恋をしたい、セックスレス、・・・。
 そして人妻が不倫相手に求めるものは、生活感のない男とのセックスという快楽。
 もちろん、不倫相手の悪いところは見ない。
 だから不倫しても離婚しようとしない人妻たち。
 不倫はしても生活の保障してくれる旦那が必要らしい。
 ということは、「人妻のセフレ」と「不倫」は同意語なのだろうか。

 著者の家田荘子さんは、よくもこんなに不倫妻を取材したなぁと感心する。北は北海道の主婦から東京、関西在住の主婦も登場する。「極道の妻たち」を始めとして、彼女のとことん取材する姿には驚嘆する。
 そういえば、数年前に繁華街のクラブ(飲み屋)で白髪に染めた家田荘子さんを見た。
 男と二人で来ており、ホステスさんとなにやら話し込んでいた。
 女性が行くような店じゃないところにいるという事は、次の作品の取材だったのだろうか。
 それらしい本は何冊か出版されているがどれだろう?




著者: 内田 春菊
タイトル: 彼が泣いた夜

 虚言症の元彼と束縛と自己中の彼に振り回されてる主人公八寿美の物語である。
 八寿美の立場に立って読むと、イヤならイヤって言ってはっきり言ってやれよってイライラする。
 八寿美の彼、元彼の立場から読むと、口ばっかりの男に振り回されてバカな女だなぁ、って思う。
 結末は、正義が勝つ、って感じです。ページ202(単行本の場合)を何回も読み返した。このページがこの小説のポイントだと思う。

 この小説に出てくるような男はいくらでもいるような気がするし、自分もそうではなかったかと回顧してしまった。


著者: 小林 信彦
タイトル: 紳士同盟

 膨大な借金をかかえた男女4人の詐欺集団は、2億円を手に入れるために次々と巧妙なトリックをしかけて被害者を巧みに信用させ大金を投資させる爽快な物語である。被害者は自分を被害者と思わせないトリックには読んでいて詐欺師たちを応援したくなる。
 その後、紳士同盟ふたたびで、再度詐欺集団の華麗な詐欺が繰り広げられる。